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2015年1月4日エレファントカシマシ(エレカシ)日本武道館

1.夢のちまた

前日とは違い宮本さんはハンドマイク
スタイル。頭のなかでどの曲が
演奏されるのか予想をしていたら、
合図を受けた石森さんがレスポールで
あのイントロを奏ではじめました。
去年のさいたまスーパーアリーナの
1曲目『sky is blue』のイントロが
流れた時とはあきらかに違う種類の
どよめきが客席からもれる。

この曲は日比谷野音の1曲目に
演奏される(屋内会場ではめったに
演奏しない)イメージが強かったのですが、
初の武道館公演の1曲目にも演って
いたんですね。

1曲目して堂々たる歌いぶり、
レコーディングティクを再現するような、
「フッ!」という不適なため息と緊張感に
満ちた間合いが、前日とは異なる
鋭い空気が武道館に流れていく。


2.DEAD OR LIVE

冨永さんのドラムさばきが機運を高め、
宮本さんのギターに石森さんのギターが
重なっていき、無骨なバンドサウンドが
展開される。

1曲目に『夢のちまた』、2曲目に
『DEAD OR ALIVE』という並びは
非常に意味深い選曲に思え、
感極まるところがありました。

登場人物が部屋の中にいて、
思いに耽るという状況は重なるが、
その心情はあまりに異なります。

「世を上げて 春の景色を語るとき 暗き
自部屋の机上にて 暗くなるまで過ごし行き
ただ漫然と思いいく春もある 」


「明日は晴れか
雨になるだろうか
明日こそは町へくりだそうか
明日になればわかるだろう
明日もたぶん生きてるだろう

春の一日が通り過ぎていく
ああ今日も夢か幻か ああ 夢のちまた」


武道館3000人限定武道館の1曲目で、
浮世を笑い、背を向ける若きに
似合わない達観を歌う
『夢のちまた』。

「もう何時間も部屋の中にいて 移ろい易き時を
ただ茫然と過ごしていた ああ 電気をつけて
まだ生きている まだ進んでる おもむろに
俺テレビをつけた 暮れゆく空 」


「本当は何も変わっちゃないのに
この町や人が変わりゆく景色に見えるのはなぜ?

終わりなきこの時の向こうに
本当は ただただ俺の心が傷付いただけ 時を重ねて
(消えゆくこの身に光を見たんだ)

男はひとりゆかなきゃならん時がある
今がその時 終わりなき明日の向こう…
奈落の底まで 堕ちてく生命」


「信じろ、この世はすべてがステージ 」


弱さと焦燥をさらけ出し、歯を食いしばり、
抗う決意を叫んで刻みつけるような
『DEAD OR ALIVE』。動員の減少により
武道館から撤退した
翌年に、バンドの原点に立ち返って4人で
作った(ミニ)アルバムのタイトル曲。
この2曲が満員の武道館で演奏
されるのを聴くと、エレカシの
只ならぬバンドヒストリーを
思って涙がこみ上げました。

7.おかみさん

演奏の前に「構想10年くらい、
何年か前に完成しました」
という
宮本さんの言葉が。歌詞や
サウンドの印象から『good morning』の
頃からあった曲に思えます。

高緑さんのベースが火花のよう。
この曲と『ジョニーの彷徨』、
『明日への記憶』のようなダイナミックで
影がある曲は、ライブバンドエレカシの
真骨頂を感じました。

8.風に吹かれて

98年の武道館のコンサートタイトルにも
使われたこの曲。

「あたりまえに過ぎ行く毎日に
恐れるものなど何もなかった
本当はこれで そう 本当はこのままで
何もかも素晴らしいのに」


このままで素晴らしくても、このままで
留まらせてくはくれな人生の不条理を
美しく切り取った歌。

12.リッスントゥザミュージック

金原千恵子さんと笠原あやのさんが
参加。金原さんの武道館のステージを
舞い踊るような弾き姿と旋律に
魅せられました。


14.普通の日々

2012年の新春ライブ以来の
この曲。

「普通の日々よ どよめきもなく 後悔も悲しみも
 飲み込んでしまう時よ」


2002年の曲ですが、
震災の後に作ったかのような歌詞。
『悲しみの果て』やこの曲のように、
わざとらしさのない身と経験か
から自然とでてくる優しさを
持った作品にはあらゆるものを
こえていく普遍性がありますね。



17.赤い薔薇

宮本さんの高音、石森さんのスライド・ギターが
絶好調。

毎日傷を増やしている冴えないろくでなしも、
赤い薔薇なんですね。宮本さんの持つ
最終的には楽観に至る自虐という
表現の核は他の作品にも通じますが、
30代前半だからこそ書けた歌詞でも
あると思います。武道館映えする名曲。



19.I don’t know たゆまずに

2008年の新春ライブ以来となる
この曲。『エレカシ自選作品集
EMI 胎動記』の最後を飾る1曲で、
『DEAD OR ALIVE』からの
苦闘を抜け出るような、確かな
希望を感じます。


演奏が進むにしたがって
盛り上がりが加速していくライブの
生き物感がありました。

30.FLYER

間奏の石森さんのソロを
宮本さんが弾いてしまったので、
石森さんは下がりながら不貞腐れ気味に
ギターを弾く。



33.平成理想主義

メンバーがサウンドチェックをその場で
行い、レコーディングティクの冒頭を
再現。復活の野音2日目の最初の曲だった、
この曲を聴いた(観た)時に宮本さんの
動きが完全に戻ってると思ったのですが、
宮本さんの動きはあんなもんじゃなくて、
もっと自由で予測不可能なものでしたね。
うさぎ跳びや土俵入りまでみせるとは。

34.笑顔の未来へ

宮本さんが泣いていたことに
気付かず、声が出ない序盤から
後半で盛り返したという風に
思ってました。

36.涙

ストリングスチームとエレファントカシマシの
皆さんを帰して、宮本さんだけステージに
残っての弾き語り。「何がいいかな?」と
いいつつ、結局定番に落ち着きました。
ギターの音程が合わないまま、
最後まで押し切ってしまう不均衡ぶり。

捌けていく時の、
「うまいものでも食って帰ってくれ」
「うまい棒でも帰ってくれ」に空耳。


37.待つ男

新春ライブの本締めと
いえばこの曲。エレカシ火山、
ミヤジ火山大噴火という風に、
ここ一番の瞬発力を最後に
出してくるこのバンドは恐ろしいです。
心臓を鷲づかみして揺すられるような迫力。


WOWOWの生中継があった上に、
初日と記憶が混じってしまっているので、
記憶に色濃く残ったことを絞って書きました。

2日とも甲乙つけがたいですが、選曲面と
バランスの良さで初日を推します。
新春武道館は華やかな内容という
ほど単純ではないですが、ドスの
きいた性格の渋い曲は少なく、
本質的にポップな曲が多かったです。
日本武道館2daysを満員にできる、
ベテランのロックバンドなんてそうは
いないですよ。宮本さんの連載を
書籍の『東京の空』のインタビューで
「(武道館は)6000人
入ればカッコはつくっていわれたけれど、
それさえも入らなくなった」

いっていた頃をおもうと奇跡のようです。
by kaze0929 | 2015-01-16 23:07 | エレカシ