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エレカシの映画



続いて登場した、漫画家の新井英樹さんは、
さんをモチーフにした主人公が登場する
『宮本から君へ』という作品を書かれている方で、
裸の大将さんを彷彿とさせるような短髪で太眉の、
やや恰幅の良い、薄手のインナーを着た
お方でした。この方も的確な見方をされていて、
お話ぶりからも人柄の良さがよく伝わりました。
初期からエレカシの魅力に気づいていた方は、
本当に凄いなと思いますね。その本物を察知する
感度の鋭敏さたるや。



次が 映画監督の大根仁さんで、
この方も坊主頭で細目の素敵な方でした。
【ライブとかまだ観てない時に、ファーストを買って、
誰がどのパートの担当だかわからなくて、最初
明らかに成ちゃんがヴォーカルだと思って、
宮本の伏し目がちな感じは、きっとこれは
ベースだろって思いました。】という
面白い内容の話をされてました。


確かに、宮本さんも最初の頃は今ほど
容姿が淡麗ではなく、高緑さんの
日本人離れした派手な顔立ちのほうが、
フロントマンっぽかったかもしれないですね。



次に流れた映像が88年の渋谷公会堂での
『ふわふわ』だったと思います。
この頃は、ギターを弾く時の
石森さんのステップが大きいのが特徴です。


再び、新井さんやyokoyamaさんが出られて、
当時の客殿つけっぱなしの暗転しない
ライブの異色さを語っておりました。
演奏の音がこんな大きくて大丈夫なのかと思ってたら、
それ以上の音のヴォーカルが聞こえてきて
衝撃であったと言ってました。


エレカシの最初の所属事務所の社長の
綾部和夫さんは、当時はご自身も
叩かれたけれど、エレカシのそのままを
出したパフォーマンスを演らせたかったという
ニュアンスの内容を語っておられました。
綾部さんは、葉巻が似合いそうなダンディな
おじさまでしたね。


次に、スピッツの草野マサムネさんが
出てた気がします。エレカシを知った頃は、
メジャーのレコード会社のバンドはかっこ悪いと
思っていたけど、エレカシは違った、
(アメリカで産まれたロックンロールの)借り物ではない
日本のロックバンドという感じ、習字の筆で一という漢字を
書くようなイメージだったと、語っておられました。



次に富士急かなんかでの『おはようこんにちは』の
中々有名な映像が流れまして、その後
BRAHMANのTOSHI-LOWさんが登場されて、
この『おはようこんにちは』を観て、
当時中学生ながら許容量を明らかに越えた
ものを観てしまった衝撃で、俺はこいつらと
同じステージにいつか立つみたいなことを
思ったと語られていた気がします。



TOSHI-LOWさんは着眼点が本当に鋭くて、
真理を突いてるなと思えることを、
終始話されてましたね。頭の切れる方ですよ。


yokoyamaさんは『エレファントカシマシ2』が
レコードがなくなるっていう話が出てきて、
次CDになるっていうことで、最初に買った
CDが2で、リハーサルでギターの音を出す時の
自分の定番が、『優しい川』のイントロの
アルペジオなんだけど、でもそのフィーリングを
持ち込もうとしてもできるもんじゃないと
語っていて、表現者としての誠実さを感じました。



大根さんは『エレファントカシマシ2』の
カセットテープを伸びきるまで聴いて、
ファーストと2を1年中聴いてたらミヤジと
一緒に住んでるような気持ちになっていたと
語っておられましたね。その没頭ぶりと、
エレファントカシマシの音を身体に染み込ませて
おられることに嫉妬してしまいますね。




2011年のツアーの大阪公演の『ファイティングマン』
音源をバックに、デビュー初期のメンバーの
プライベート映像が流れて、最後の〆の所で
2011年の映像に切り替わった後、2013年現在の
エレファントカシマシの姿が差し込まれ始めます。


メガネを掛けて、鬚を伸ばし、パーカーの上に
ジャケットを羽織った宮本さんが、特注の
イヤーモニターを着けて、久しぶりにバンドで
音を合わせるシーンが、現在の映像の始まりでした。
メンバーが宮本さんの耳の具合を心配してることを、
感じさせる部分もあって、宮本さんがその必要はないっていう
ことを諭すような場面もありました。
楽しそうに話す宮本さんの声(喋り方)は
可愛らしかったですね。


宮本さんは私服でグッズのTシャツを着用していて、
室内でも高い割合でジャケットを羽織っているのが、
らしいなと思いました。タバコをあると
吸ってしまうからといって、少しだけ残して
捨てるシーンにも彼の不器用さが
表れておりました。顔が浮腫んでるように
見える場面も少なくなかったですが、
元気な姿にとにかく安心です。


宮本さんはこの休養期間中に、
新曲を50曲以上作り、2年ぶりに論語の原文を
毎朝読む習慣を再開されたようです。


車の中で宮本さんがインタビューされるシーンでは、
昨年の野音でのステージの後、耳の状態が悪化して、
メロディーが取れなくなった時期もあって、
今ではそれに慣れてきてる、(むしろ)治ってきたと
思うと話されてました。バンドで音を合わせてなかった時期、
石森さんとはたまに会ってたけど、高緑さん、
冨永さんとは会ってなくて、何をしてたのか
全くわからないと言った後に、ぼそっとした声で
【渋い】とお二人のことを
形容した場面で笑ってしまいました。



次に、高緑さんのインタビューがありまして、
普段エレファントカシマシのコンサートに
よく行かれる方でも、あまり聞くことのできない
寡黙な彼の話す声をじっくり聞けて、
嬉しかったですね。


高緑さん、張りがあって、よく通る声をされていまして、
寡黙な分声帯が鮮度の良い状態を保って、おられるのかなとも
思いました。


石森さんなんかは相変わらずなイヤミ的
髪型で、冨永さんは柔らかい笑顔と、
やや舌足らずな声が素敵でして、Tシャツも
ストライプのシャツもチェックのシャツも
似合っていて、本当にお洒落な方なんだなと。


3人とも素晴らしいお話をされてましたので、
それはまた後々。


過去の映像は『浮世の夢』の頃の話になりまして、
新井さんが、永井荷風の文章にレッド・ツェッペリンの
サウンドを載せるというとんでもないことをやろうと
していたと宮本さんが言っていたというのを
話されていて、マキタさんはバブルのキラキラした
時代に、音の空間的な広がりを一切無視した
ヴォーカルの生身の感じに衝撃があったという
話をされていた気がします。



これは映画全体の中でも特に印象に残っている
部分なのですが、yokoyamaさんが『珍奇男』の映像で
宮本さんが適当にギターを弾いて、他の3人と全く別の世界を
展開していてるのを観て、これアリなんだ!という風に、
少年のような表情で語ってたんですね。



私もその映像をアルバイトが終わって貰い物のチキンを
食べて深夜にお腹を下しながら観ていたので、そういえばそうだなって、
思い出せたのですが、そこまで自覚的に観てなかったな、
どう観るかって大事だなって強く思いました。
これからのエレファントカシマシを追いかける上では
それができるわけですからね。宮本さんが大真面目に
滅茶苦茶なギターの弾き方をしてるんですよ、
『ガストロンジャー』のライブでよく見せる、
支離滅裂だけど説得力のある狂気の表出みたいなものが、
既にありましたね。
『エレファントカシマシ EPIC映像作品集 1988-1994』を
またじっくり見ようと思います。




『生活』、3000人武道館の頃の話へ。
草野さんは武道館の時は照明効果が
全く無い中、唯一『男は行く』の時にだけ
赤のライティングがあって、それが非常に
印象的であったと語っておられました。



TOSHI-LOWさんは『男は行く』がすごい好きで、
気が狂ってんな、これは女の人聴かんやろ!って
言ってました。


最近、私も『男は行く』すごくいいなと思うように
なりました。ロックもあり、ブルースでもあり、
ファンクでもある骨太でゾクゾクするサウンドに、
肌が焦げそう強烈なシャウトに乗った詞の世界が
圧倒的です。ライブの本編最後に演奏されることも
多いので、非常に重要な曲なのだと思います。



汐留PITでRCサクセションとストリートスライダーズの
前座を務めた時の映像で、宮本さんがあるお客さんに
【オマエなんの仕事してんのか言ってみろよ?
こっち上がってこいよ 何にもできねえくせによ】と
言ったり、別のお客さんには【オマエ出て行っていいよ。
ノってもらわなくていいよ! オオボケが!
RCサクセションで踊ってろ!】という風に悪態をつく
場面が流れて、綾部さんは言えないような問題が
たくさんあったとおっしゃってましたね。



93年のNHKホール公演では【どっかのバカがよ
最初で最後のNHKホールだとか言いやがったらしいんだよ
客が入らねえからってよ ふざけんじゃねよ】と
言う風なことを憎々しげに話してましたね。


yokoyamaさんはこの時のNHKホールは宮本さんが
悪態ついちゃって、酷かった、人に見せて
いいものじゃなかったと言っておられました!


新井さんはこの時の最後のが『奴隷天国』の初披露で、
【オメエだよ!】の叫びを観客もどう受け止めればいいか
戸惑っていたとおっしゃってましたね!
契約切れの話がチラついたり、荒れてた時期だったのだと
思います。

NHKホールでの『待つ男』だったり92年の日比谷の野音での
『奴隷天国』リリース前に演奏された『日曜日(調子はどうだ)』のような
貴重映像が観れたのもよかったですね。
86年のポプコンの『ゴクロウサン』の映像の20歳の宮本さんは、
鎖から放たれた猛獣のようにギラギラとした表情をしてました。
これも貴重な映像です。


契約切れの頃の話が出てきました。
新井さんが契約切れた後、市川のライブハウスで
黒いスーツの男の人が3人にいて、あれは新しい契約先の人
じゃないか?と思って、一緒に見に行った人に、
今日盛り上がんないとエレカシの新しい契約先
なくなっちゃうよって話て、盛上げようと考えてたと
言ってました。

過去のインタビューで読んだ記憶があるのですが、
たしかこの市川のライブハウスでのステージから、
宮本さんが観客に対してフレンドリーに話し
始めるようになったのではなかったでしょうか。



契約切れの時、宮本さんがコンビニで雑誌を読んだら、
エレカシは一部の熱狂的なファンに支持されたけど、
もう終わったと書かれてるのを見て、怒ったという
結構有名な話がありますが、初期のエレカシファンの
追いかけることの熱心さたるや本当にすごかったんだなと
新井さんの話を聞いて思いました。



TOSHI-LOWさんのなんとかして、この頃のライブに
潜り込めないかと考えてたという話から、95年の
下北シェルターの映像が流れます。


シェルターの映像の頃の宮本さんは、
今と比べると目元の感じが切れ長で鋭く、
どこか爆笑問題の太田光さんを
思わせる風貌だと思いました。両手を大きく
広げる動作も似ています。



『悲しみの果て』の初披露映像がほぼフルで流れる中、
マキタさんがサンクスで『悲しみの果て』を聴いて、
その声に宮本さんやめてよって恥ずかしくなって
しまったとか、yokoyamaさんがエレカシコンビニで
流れちゃったよ!って思ったとか、草野さんは
【頑固な親父が打つ蕎麦屋に行って、怒られながら
食べるのが好きだったのに、親父店広くしちゃったよ、
でも、店は広くなったけど、味は全く落ちてなかった。】と
言ってました。いい表現ですね。何故だか蕎麦屋に行きたくなります。



TOSHI-LOWさんがまた凄いこと言うんですよね。
【(エピック以降のエレカシは)ポップなんだけど、
でも歌ってることは相変わらず救いのないことを
歌ってんなって、でもそれを沢山の人が受け入れてるんだから、
人間の持つ無常観みたいなものが受け入れられているのかなって】
、多分少し表現が違うんですが、こんな感じでした。



『悲しみの果て』でも、いつもと変わりない普通の
日常があって、それこそが素晴らしい日々なんだっていうのは、
宮本さんしか絶対たどり着けない非凡な表現で、
私はそこに希望を感じたんですが、確かに救いようのない
表現でもあるんですよね。安直な希望だと響かないし、
ある種のやりきれなさみたいなものを孕んだ上での
真理や希望を届けてくれる宮本さんのソングライティングは、
唯一無二ですよ。それを再実感出来ました。


『四月の風』がFM802のヘビーローテーションで
1年近く流れていたということで、FM802の岩尾知明さんも
インタビューされていて、【エピックの頃も、今日は
いい日じゃなかったけど、明日は!みたいな
歌はあったんと思うんですけど、頭から『明日も
頑張ろう』って言ってるのはなくて、これラジオから流れたら
いいなって思いました。】というように話されてましたね。



日比谷の野音の観客席で、メンバー4人がインタビュー
されるシーンがありまして、エピックの頃のライブの心境と
契約が切れた後の心境の変化を宮本さんはこんなふうに
語っておりました。エピックの頃については【(ライブは)
お客さんを圧倒するものだと思ってたんですね。
でも前橋ラタンっていうところで
やった時、『星の砂』を演ったら凄い盛り上がっちゃって!、
お客さんが全員立ち上がってちゃって、逆に
圧倒されちゃって、盛り上がるとこでやったこと
なかったから。】という風に話されていて、契約切れの後については
【シェルターの小さなチラシの表紙になった時は
嬉しかったですね。電車に乗ってると、みんな働いてる人で、
まあ、みんなじゃないんだけど。僕は2年ぐらいですけど、
(レコード会社と事務所の契約がなくて)ミュージシャンでも
なんでもなくて、だから『何かが起こりそうな気がする』って
やっぱ思うんですよね。】って言ってましたね。


宮本さんって前向きですよね、ストイックなんだけど、
楽天的で、そういう人の良さとか前向きさみたいなのが
曲の中とかパフォーマンスにやっぱ出てるんですよね。


『四月の風』の映像はサビ前までが2004年の日比谷野音で、
サビからは98年の日本武道館の映像(映像はその日のダイジェスト映像)
でした。



映画によって、エピックレコードからポニーキャニオン期までの
移り変わりを、直接見届けたことに匹敵するくらいの
熱量と臨場感で観客に追体験させるという離れ業が、
この映画にはありました。


ザ・バックホーンの山田さんと菅波さんも、
出ておられまして、若者!っていう感じが
しましたね。『今宵の月のように』を97年に
聴いたという話でした。


2007年の日比谷の野音の、宮本さんがタバコ屋の親父
みたいな声で、触りを弾き語ってから、本来の歌い出しに
入る『今宵の月のように』なんかも観れました。


同じく2007年の野音の『俺たちの明日』の
映像もあったんですけど、宮本さんが曲に入る前に、
色々お話されてる時、マイクとの距離感が適切じゃなくて、
半生声みたいな状態になる部分がとても自然でいいなって
思いましたね。


『俺たちの明日』を宮本さんが声を枯らして、
泣きながら歌っているのを観て、この曲は
同世代のファンを戦友として捉えてる部分や、
若さの辛さとか大人になることを、ずば抜けて
秀悦な表現で歌った曲だっていうことを、
再発見できた気がします。


現在のエレファントカシマシのリハーサル風景で
あったり、宮本さんの録音作業がかなり多く
登場するんですよね。『扉の向こう』よりも
ヴォリュームの面では、非常に多いと思います。


メンバーを叱咤する宮本さんの語彙が
彼以外考えられないものばかりなんですよ、
高緑さんのベースを【オマエ、納豆売りみたいだな!
兎の糞みたい】、後者はともかく、前者は意味が
伝わらないのではと思います。石森さんを
ひょっとこ星人、高緑さんを鳩星人、冨永さんを
奥さんに叱られる旦那さんなどと言っておられましたね。


今までライブとかを観てると、宮本さんの怒号や
罵倒が向けられるのは、石森さんと冨永さんで、
高緑さんは怒られる場面を見たことがなかったんですが、
この映画ではかなり厳しく言われてましたね。
【オマエダメ!】、
【野音で普通のおじさんが出てきた
みたいになったらどうすんの】、【家で1万回、いや
無条件で3時間、2時間、1時間半か、弾き続けろ!】とか
言われてましたね。


宮本さんは本当に先生でした。
ギターもベースもドラムも、
身体からが出そうなほどの気迫で
お手本を見せるんですよね。
『扉の向こう』に劣らぬ、緊張感がありつつも、
宮本さんの言葉や表情や声のトーンにメンバーへの
信頼感とか愛情がはっきり覗いてるんですよね。
受けとめるメンバーもまた同じで。


石森さんは宮本さんに、腰を落としてギター弾く
指導をしたり、音合わせの時一人だけ腕立て伏せを
させられたりしてました!他のバンドに置き換えると
考えられないですよね。


冨永さんは、大らかな方なので、
宮本さんの【ドラム面白くねえな】、
【俺を怒らせたいの?】浴びせられがちで、
時にはドラムを壊されたりしたことも昔はあって、
そんな話がインタビューにもありましたね。
宮本さんの指摘を受けて、珍しく頭を抱えて考えこむ
場面もありましたが、【カッコ良さの片鱗が見えた】と
言わせるような場面もありましたね。技術的な
ダメ出しはなく、叩き方が弱くなってしまうことや、
気持ちをもっと出せという叱咤が冨永さんに
対しては多かったですね。結果的に30倍くらいの
気迫で叩かないとダメだともいわれてました。
【オマエ牧歌的だな!】とも言われておりました
宮本さんが車の運転について話しているときは、
冨永さんが良い聞き手になっていて、
にこやかないいムードがありました。


皆さん演奏力は確実に昔より上がってますし、
3人とも47歳になって、まだまだ成長できる人たちなんでしょうね。
宮本さんも【それぞれの音を取り戻すことをしている。
もっと行けるはず!】という風に衰え知らずの
向上心を表してましたしね。



宮本さんのそういう厳しさを、
新井さんは【聞くところによると相当な
暴君らしいじゃないですか】と語り、
yokoyamaさんは【僕がエレファントカシマシの
5人目のメンバーとして入ったとして、
あれされたらかなわないですもん。すぐ抜けますよ。】と
言ってました。大根さんはエレカシイコールミヤジと
思われがちだけど、あの3人あってのものだと
思うと言ってました。本当にその通りであることを、
映画を観て今まで以上に強く確認できましたよ。



今回の映画では、宮本さんがしっかりとした理論を持って
メンバーを叱咤してることが伝わる内容になってます。
上手くやろうとするんではなく、迫力を出せ!、
一生懸命やれ!、気迫が足りない!、それじゃ
歌いたくないっていう風なことを言ってまして、
技術ではなく、ミヤジの説得力のある歌に負けない
気迫のある演奏を求めてるんですよね。


【名前だけエレカシのままで巧い人たちと演るか、
でもバンドでやったほうがいいと思うんだよな】とか、
【自分が歌うのをイメージした時、誰の演奏で演るかって
言って思い浮かぶのはメンバーしかいない】って、
生の感情が伝わる言い方で語ってました。



高緑さんは宮本さんが持ってくるデモテープの
時点で、歌に対する音の表現が物凄く繊細だと
いうこと、演奏は熱量を出すことが大切で、
それは体力とは違うから、今も追求できるという
話をされていました。


後、冨永さんが宮本さんのことを
【凄いよ】と言った、一言の重みと、
込められた思いは強烈に記憶に焼き付きましたね。
3人はどんな人よりもミヤジの凄さを知っていて
だからこそ、彼を選んでずっとついていってるのだと
思いました。本物3人ですよ。



宮本さんが個人作業で録音したり、
歌詞を考えたり、アレンジを詰めたりしてる
曲の断片とかを聴いても、信じられないくらいの
完成度と歌の説得力が伝わりました。
完成形を聴ける日を楽しみに待ちたいです。


クライマックスではエレカシとは何かというのを、
インタビューされた方々がそれぞれ語っておりまして、
印象的だったのは、TOSHI-LOWさんの
【ガラパゴス的に独自の進化を遂げた世界レベルの帰宅部】という
評し方とマキタさんの【イノセンス、生身のまま。
平均点のコミュニケーションをしたりしている、自分の
不純さに気づかされる。エレカシを聴いていると、
恥を知れって言われた気になる。】と言う風に
語っておりました。


インタビューの最後を〆た草野さんの
【オセアニアに渡った有袋類が
カンガルーになったような。
エレカシは日本のバンドですではなくて、
日本のバンドはエレカシです】っていう言葉を、
素晴らしい言い切り方だと思いました。
センスが圧倒的ですね。



個人的にはマキタさんの言葉は、私がエレカシに対して
感じる印象に近いなと勝手に思いました。
いつも襟を正してくれるんで。すよね、自分が恥ずかしくなるというか、
前向きな意味でそうなんですエレカシは、
与えてくださる元気の質が他のものとは違いますね。
恥を知れって直接的には絶対エレカシの音楽を
言いやしないんですが、でもオマエ本当はそうじゃないだろう?、
もっと力強く生きれるだろって、言ってくれてる気がします。



生きてくことも、日本っていう国もグラグラと薄汚く
揺れ動いていて毎日のように嫌気がするんですけど、
エレファントカシマシの音楽だけは、唯一無二の
確かな希望なんですよ。聴き手として、これからも真剣に
4人の音と対峙し続けたいと思います。


バンドの歴史の重みも体験出来ましたし、
休業期間がエレファントカシマシの
音楽へ求道性を更に高め、グルーブを研ぎ澄ませる
ために必要な時間だったのだと確信出来ました。
これからもエレファントカシマシドーンと
行ってください。私も今の30倍くらい気迫の入った
レポートを書けるように、鍛錬します。


宮本さんがウォークマン叩き割り事件で
お馴染みの『かけだす男』の佐久間さんが
考えたベースラインをあれ結構いいですねと
穏やかに語っていたのも、時間が流れることの
良さですね。



宮本さんの生ぬるい暮らしをしてると
それが音に出るという言葉(直接こういったわけではないのですが)は、
この身から流していけないって、自分に言い聞かせて、
その意味が体に沁みこむような行動を、
私なりにでも重ねていこうと思います。
普段の暮らしこそ、こういう表現に繋がるんです。
佇まい、緊張感の度合いが出るはずなんですよ。


エレカシの魅力は歌と音に込められた、
思いがホンモノであるっていうことだと
わかりました。練習の段階で誤魔化しや
流すことは一切無くて、人間の持ってる気というか、
30年以上連れ添った同級生の4人の結びつきを、
気迫と緊張感を宿した形で表出するための、
鍛錬と熟成をあの4人はやってるんですよね。
鍛え方の種類が違いますね。
比較をするのは陳腐ですが、他のバンドと
気迫の色の濃さと温度の高さが全然違うから、
エレカシのグルーブは独自の響き方をするんです。
# by kaze0929 | 2015-10-28 14:57 | 日記

1.夢のちまた

前日とは違い宮本さんはハンドマイク
スタイル。頭のなかでどの曲が
演奏されるのか予想をしていたら、
合図を受けた石森さんがレスポールで
あのイントロを奏ではじめました。
去年のさいたまスーパーアリーナの
1曲目『sky is blue』のイントロが
流れた時とはあきらかに違う種類の
どよめきが客席からもれる。

この曲は日比谷野音の1曲目に
演奏される(屋内会場ではめったに
演奏しない)イメージが強かったのですが、
初の武道館公演の1曲目にも演って
いたんですね。

1曲目して堂々たる歌いぶり、
レコーディングティクを再現するような、
「フッ!」という不適なため息と緊張感に
満ちた間合いが、前日とは異なる
鋭い空気が武道館に流れていく。


2.DEAD OR LIVE

冨永さんのドラムさばきが機運を高め、
宮本さんのギターに石森さんのギターが
重なっていき、無骨なバンドサウンドが
展開される。

1曲目に『夢のちまた』、2曲目に
『DEAD OR ALIVE』という並びは
非常に意味深い選曲に思え、
感極まるところがありました。

登場人物が部屋の中にいて、
思いに耽るという状況は重なるが、
その心情はあまりに異なります。

「世を上げて 春の景色を語るとき 暗き
自部屋の机上にて 暗くなるまで過ごし行き
ただ漫然と思いいく春もある 」


「明日は晴れか
雨になるだろうか
明日こそは町へくりだそうか
明日になればわかるだろう
明日もたぶん生きてるだろう

春の一日が通り過ぎていく
ああ今日も夢か幻か ああ 夢のちまた」


武道館3000人限定武道館の1曲目で、
浮世を笑い、背を向ける若きに
似合わない達観を歌う
『夢のちまた』。

「もう何時間も部屋の中にいて 移ろい易き時を
ただ茫然と過ごしていた ああ 電気をつけて
まだ生きている まだ進んでる おもむろに
俺テレビをつけた 暮れゆく空 」


「本当は何も変わっちゃないのに
この町や人が変わりゆく景色に見えるのはなぜ?

終わりなきこの時の向こうに
本当は ただただ俺の心が傷付いただけ 時を重ねて
(消えゆくこの身に光を見たんだ)

男はひとりゆかなきゃならん時がある
今がその時 終わりなき明日の向こう…
奈落の底まで 堕ちてく生命」


「信じろ、この世はすべてがステージ 」


弱さと焦燥をさらけ出し、歯を食いしばり、
抗う決意を叫んで刻みつけるような
『DEAD OR ALIVE』。動員の減少により
武道館から撤退した
翌年に、バンドの原点に立ち返って4人で
作った(ミニ)アルバムのタイトル曲。
この2曲が満員の武道館で演奏
されるのを聴くと、エレカシの
只ならぬバンドヒストリーを
思って涙がこみ上げました。

7.おかみさん

演奏の前に「構想10年くらい、
何年か前に完成しました」
という
宮本さんの言葉が。歌詞や
サウンドの印象から『good morning』の
頃からあった曲に思えます。

高緑さんのベースが火花のよう。
この曲と『ジョニーの彷徨』、
『明日への記憶』のようなダイナミックで
影がある曲は、ライブバンドエレカシの
真骨頂を感じました。

8.風に吹かれて

98年の武道館のコンサートタイトルにも
使われたこの曲。

「あたりまえに過ぎ行く毎日に
恐れるものなど何もなかった
本当はこれで そう 本当はこのままで
何もかも素晴らしいのに」


このままで素晴らしくても、このままで
留まらせてくはくれな人生の不条理を
美しく切り取った歌。

12.リッスントゥザミュージック

金原千恵子さんと笠原あやのさんが
参加。金原さんの武道館のステージを
舞い踊るような弾き姿と旋律に
魅せられました。


14.普通の日々

2012年の新春ライブ以来の
この曲。

「普通の日々よ どよめきもなく 後悔も悲しみも
 飲み込んでしまう時よ」


2002年の曲ですが、
震災の後に作ったかのような歌詞。
『悲しみの果て』やこの曲のように、
わざとらしさのない身と経験か
から自然とでてくる優しさを
持った作品にはあらゆるものを
こえていく普遍性がありますね。



17.赤い薔薇

宮本さんの高音、石森さんのスライド・ギターが
絶好調。

毎日傷を増やしている冴えないろくでなしも、
赤い薔薇なんですね。宮本さんの持つ
最終的には楽観に至る自虐という
表現の核は他の作品にも通じますが、
30代前半だからこそ書けた歌詞でも
あると思います。武道館映えする名曲。



19.I don’t know たゆまずに

2008年の新春ライブ以来となる
この曲。『エレカシ自選作品集
EMI 胎動記』の最後を飾る1曲で、
『DEAD OR ALIVE』からの
苦闘を抜け出るような、確かな
希望を感じます。


演奏が進むにしたがって
盛り上がりが加速していくライブの
生き物感がありました。

30.FLYER

間奏の石森さんのソロを
宮本さんが弾いてしまったので、
石森さんは下がりながら不貞腐れ気味に
ギターを弾く。



33.平成理想主義

メンバーがサウンドチェックをその場で
行い、レコーディングティクの冒頭を
再現。復活の野音2日目の最初の曲だった、
この曲を聴いた(観た)時に宮本さんの
動きが完全に戻ってると思ったのですが、
宮本さんの動きはあんなもんじゃなくて、
もっと自由で予測不可能なものでしたね。
うさぎ跳びや土俵入りまでみせるとは。

34.笑顔の未来へ

宮本さんが泣いていたことに
気付かず、声が出ない序盤から
後半で盛り返したという風に
思ってました。

36.涙

ストリングスチームとエレファントカシマシの
皆さんを帰して、宮本さんだけステージに
残っての弾き語り。「何がいいかな?」と
いいつつ、結局定番に落ち着きました。
ギターの音程が合わないまま、
最後まで押し切ってしまう不均衡ぶり。

捌けていく時の、
「うまいものでも食って帰ってくれ」
「うまい棒でも帰ってくれ」に空耳。


37.待つ男

新春ライブの本締めと
いえばこの曲。エレカシ火山、
ミヤジ火山大噴火という風に、
ここ一番の瞬発力を最後に
出してくるこのバンドは恐ろしいです。
心臓を鷲づかみして揺すられるような迫力。


WOWOWの生中継があった上に、
初日と記憶が混じってしまっているので、
記憶に色濃く残ったことを絞って書きました。

2日とも甲乙つけがたいですが、選曲面と
バランスの良さで初日を推します。
新春武道館は華やかな内容という
ほど単純ではないですが、ドスの
きいた性格の渋い曲は少なく、
本質的にポップな曲が多かったです。
日本武道館2daysを満員にできる、
ベテランのロックバンドなんてそうは
いないですよ。宮本さんの連載を
書籍の『東京の空』のインタビューで
「(武道館は)6000人
入ればカッコはつくっていわれたけれど、
それさえも入らなくなった」

いっていた頃をおもうと奇跡のようです。
# by kaze0929 | 2015-01-16 23:07 | エレカシ

前回の新春武道館公演(2011年)は、アルバム『悪魔のささやき』の
収録曲が初めて全曲演奏されたライブであり、ユニバーサルに
移籍してからその時点までのキャリアを総括するような
内容でした。それから4年ぶりとなる、今回の新春武道館。
昨年のツアー、日比谷の野音、小さなライブハウスの
記念公演を経て、新曲を出さずにむかえた、初日。
さいたまスーパーアリーナ公演の時のように、25周年のダイジェストという
テーマ(縛り)からも自由であるだけに、
エレカシがどんなステージを観せてくれるのかという、
想像と期待が昨年以上に膨らみます。


1. 部屋

エレファントカシマシ(S)の6人が
ステージに登場。宮本さんが
黒のストラトを肩にかけながら、
「僕の部屋にくるなら地下鉄の
ホームを出て 目印はあのレストラン」

歌い出すと!客席からは自然などよめきと、
喜びに満ちた歓声があがる。


武道館の1曲目は、小林武史さんと組んで
ニューヨークでレコーディングしたアルバム
『ライフ』からのナンバー。
2002年の11月に、今はなき渋谷AXで
演奏して(昨年のツアーの2日めに
さわりだけ弾き語りして)以来の
『部屋』。この選曲は、
意外性と待望の成就という
てんで、最高の1曲目でした。


かつては、歌詞を過去形に変え、
1人称を僕から俺に変え、
憎々しげに歌っていて、
その後は長らく封印していた
この曲がついに聴けました。


優しい美声と身体の底から
響かせて、空気を揺らすシャウトへの
移り変わりに魅せられた3分間。


「町はずれ小さなこの部屋」というのは、
宮本さんの立っている場所や存在の
比喩かもしれないとも思いました。


2 .はじまりはいつも

2010年のZEEP TOUR以来
となるこの曲。『sweet memory~
エレカシ青春セレクション~』という
売れたCDに収録されている(94年の
アウトティク)曲とはいえ、
かなりマニアックな曲を持ってきて、
勝負する心意気に興奮。

リズムの変化や、ヴォーカルディレイ、
演奏のブレイクなど、アレンジの凝り
具合が面白い1曲。蔦谷さんのキーボードの
存在感も際立ちます。

【 始まりはいつも 静かなものだった
見えざるその毎日に 何かが始まってる】


正月ボケのカラダとドタマが
目覚めていきました。


3. ココロのままに

宮本さんのギターから、
またもや久々となる、
ポップなギターロックナンバーを。

宮本さんの【1!2!3!4!、石森、行け!】から、
石森さんの贅肉のないシャープで男前な、
ギターソロへ。曲の佳境では冨永さんのソロもあり。


4. 今はここが真ん中さ!

前の曲から間髪入れず、ギターも降ろさず、
宮本さんがカウントを叫び、祝祭のような
イントロへ。初日も2日目も、この曲がはじまった
途端に、武道館が一気に熱狂に包まれていく光景は
壮観でした。とにかく曲で伝えようという、
いつもと変わらぬ心意気が伝わりました。


間奏ではヒラマさんの肩に
手をやりながら【ギター!ミッキー!】
【今は武道館がど真ん中!】
歌詞替えもバッチリ。


5 .悲しみの果て

お馴染みの【みんなに捧げます】から、
この曲へ。エレカシにとって、
もっとも身体に染み付いているのは
この曲かもしれません。


6 .デーデ

宮本さんが(カウベルの音をバックに)、
「この世で一番偉大なものは
何だかわかりますか?これ自分で予言していました。
この世で一番偉大なものはお金です!
今年はヒット曲を狙うぞ!今年は、稼ごうぜ!
エビバデ!オーケー、石くん!」


この演説をする宮本さんの表情や
声色は終始、信じがたいほどピュア
なものでした。「世界から
貧困をなくしたい」をなくしたいと
語っていても、その人の目が濁っていたり、
不穏なオーラを漂わせていたりすれば、
本心を疑ってしまいますし、言葉以外の
部分にこそ、その人の本質的な部分が
表れるのではないかと思います。
私は宮本さんっていい人なのだなと
改めて思いましたね。

この曲をRJFで演奏する前に、「誰か俺に1000万円
くれないか!」
と他力を求めるように
叫んでいた10年前(2005年)を思うと、
中々感慨深い、デビュー曲にのせた
所信表明だったと感じます。

これといったプロモーションなしで、
武道館2日とも満員になったということで、
利益率的にも幸先のよい稼ぎはじめになったの
ではないでしょうか。


〆は演奏を静止してからの
「金があればいい!」

7 .パワー・イン・ザ・ワールド

「俺は久しぶりに発見しました……(しばらく
言葉に詰まる)、山手線のなか
行くてはまだ先だ(手を回しながら口づさむ)」


この曲はツアーでも演った曲なので、
結局何を発見したのかは全くわからず。
この日は宮本さんの発言の不明瞭さ、
話を尻窄みのまま無理やり打ち切る場面は、
いつも以上でした。

演奏は文句なし。この曲も
盛り上がる。高緑さんのベースの
唸りが武道館を揺らす。


8 .おまえとふたりきり

宮本さんが男椅子に座り、
石森さんのギターがレスポールだったので、
『珍奇男』かと思ったら、これまた
意外な選曲。

宮本さんがジャガジャガとアコギを
長めに掻き鳴らしてから歌いだしへ。
クールで大人っぽいラブソングなので、
若い頃よりも今のほうがシックリきますね。



この映像のように、「いつも揺らめいてる
キミのまなざし」
のところの音程を
変えて歌っておりました。待ってました!という感じの、
個人的な聴きどころ。


9 .精神暗黒街

生演奏は初聴き。
付け足されたイントロと
余韻のようなノイズが絶妙。
蔦谷さんのキーボードの怪しげな
音色と、宮本の声色と上手く調和する
コーラス、どちらも好きです。


10. 季節はずれの男

【前の曲と、どっちが古いか忘れちゃったんですけど。
でも、こっちのほうがやや新しい曲です。
今はなき(東芝)EMIのスタジオで録りました】


ロックの色気に溢れた演奏。傷や弱さを
さらけ出す美しさに涙がとまらなくなりました。

「努力を忘れた男のナミダは汚い」

このラインだけで何もいりません。
『俺の道』からの曲が武道館で
演奏されるのはこれが初でした。


11 .真冬のロマンチック

「外は寒いけど、何だかココロが
暖かくなってこないかい?歌でもどうだい?
オーケー、『真冬のロマンチック』」


新春ライブの定番曲。これもまた盛り上がる。
凄まじくポップな曲に「こうなりゃみんなで
昇天さ」
という日常に潜む非情な死の
足音を歌う詩がのっける宮本さんの才能。


12. 彼女は買い物の帰り道

金原千恵子さんと笠原あやのさんを
迎えての演奏。
「言うのも恥ずかしいんですけど、女性の気持ちに
なって作った曲です。でも、男も女もこんな
風に思って生きていると思います。」


この曲でしか聴けない宮本さんの
歌声があって、金原さんと笠原さんも
エレカシの演奏に負けない、
それを食うような気迫に溢れた
演奏。

13 .昔の侍

曲の入りを若干手間取って
いましたが、武道館に響いた
ストリングスの生音はダイナミック
でインパクトがありました。

宮本さんの美声ぶりが
際立つ1曲。


14 .もしも願いが叶うなら

これも生演奏をはじめて
聴いた曲。詩もメロディも
文句のつけようがない
大名曲。もったいぶらずに、
もっと演ってほしい曲です。

コットンクラブで蔦谷さんが歌っていた
パートも宮本さんが歌っていました。
タバコをやめてから、ほんとうに
声がよく出るようになりました。


「この身さえ砕けて消えろと思わずつぶやいて
笑っちまったぜ 笑っちまったぜ」


このラインに宿る哀感が針のように
胸に刺さる。


15 .シグナル

これは演奏の全てが
記憶に、心に刻み込まれるような
名演でした。バンドとストリングスの
サウンドの溶け合い方、宮本さんの
歌の繊細な抑揚と曲の肝になる
ラインを歌うときの凛々しい絶唱。


16 .あなたへ

ヒラマさんのアコギの音がかなり大きい!
「悩み遥けき 蹴落とす戦いの中で」からの、
冨永さんのドラムはいつ聴いてもいいです。


17 .赤き空よ!

前回の武道館の時から、この曲は化けた
気がします。歌がそれまでと比べ
圧倒的に良くなった。

第一部ではほとんどギターを弾いて、
歌っていた宮本さんもハンドマイクでステージの
端から端まで動き回る。音響装置を仕切る
黒い壁に足を掛けたり、ステージにひざまずくように
歌うなど自由自在。

今のエレカシを空の色であらわすと
夕暮れの赤き空なんですね。そう思うと、
このストレートな歌が尚更染みてきます。


18 .今宵の月のように

「ここ(この曲順)で、この曲を演るのも
どうかと思うけど、でも、ヒット祈願ということで、
縁起のいいこの曲を聴いてくれ!」


聴く度に、好きになる曲です。
「いつの日か輝くだろう」と歌い続けてこその、
エレカシだと思います。
いつも演奏が終わったと思ったところでの、
宮本さんによるアレンジしたサビの弾き語りを
挟んで、バンドで〆へ。


19. 笑顔の未来へ

2日目は宮本さんが泣いてしまいましたが、
この日は歌声が絶好調。
「絶対連れていくよ 笑顔の未来へ」


2008年に世に出たこの曲は、
1988年に世に出た『ファイティングマン』の
20年後だと思っております。


20 .ズレてる方がいい

宮本さんは、ギターをジャーンと鳴らしてから、
「エビバデ!ズレてる方がいい!」
激唱!イントロを長めに演奏して。
間奏では、宮本さんと石森さんが向い合って
ギターを弾きあう。

演奏を静止しての、「ズレてる方がいい」
シャウトはなんと形容したらいいのやら。生き物のような、
宮本さんの分身のような生命力に満ちた空気を切り裂く
轟音シャウト。


21 .俺たちの明日

「第一部、最後の曲です」

2番の前で、ポーズを取りながら
「記念に見てってくれよ!
俺の姿を!」


この曲でエレカシを聴きはじめた人も、
この曲でエレカシに幻滅した人も、
この曲はもう飽きたという人もいると思います。

宮本さんの人生、エレカシの歩みを
凝縮した上で、ポピュラリティを持った
曲に仕上げて勝負した初心の曲として、
大事に歌いたいという気持ちがあるのだと
思います。誘われてくるような一見さんも
少なくないであろう今回は欠かせぬ曲だったはず。


第二部

22. 大地のシンフォニー
「新しい曲を」という宣言の
後に演奏されたのは、3年前に
出たこの曲でした。

この曲も、復活の野音から
急激に化けた1曲。
ヒラマさんのアコギと
蔦谷さんのキーボードが
あってこそ、本領を発揮する曲だと思います。
アコースティックなグルーブの中で、冨永さんのマーチング
バンド風のドラムが存在感を示していました。

宮本さんは身体を蛇腹のように動かしながら、
歌う。


23. Destiny
「レコード、CDでも参加してくれています。
金原千恵子ストリングスチーム」


歌い出しから、一切緩みや淀みを
感じさせずに堂々と響く宮本さんの歌声。

最後のサビでの「時計回りの日々」を
歌うときに、腕時計を眺める動作をしながら、
時計回りにクルクル回るという一度見たら
忘れられない動きをみせた宮本さん。
笑いながら、泣いてしまいそう。

24. 桜の花、舞い上がる道を

宮本さんは最初からハンドマイクで、
ロック歌手稼業に集中。
【取り敢えず行くしかなさそうだ 上り下りの道 ああ
信じて転がるエブリデイ】
のあたりで
涙の滝が決壊してまいボロボロに。

「見ろよ あの大いなる花を!」
最後にアドリブを入れ、開脚ジャンプを決めて、
振り返ると腹部がチラリ。


25. なからん

桜の花とは、打って変わった曲を
やるという内容の宮本さんの言葉から
この曲へ。冨永さんのドラムがあまりに
凄まじかったです。

「我が心 もはや楽しき時なからん」
歌う宮本さんは、昔から何も変わっていない。


26.雨の日も

ドキュメンタリー映画で断片を
聴くことはできましたが、フルでは
初披露。数曲を組み合わせたかのような
大胆な転調がある大曲。音像的にも
新しいエレカシを感じます。

歌詞は永井荷風の『断腸亭日乗』のような
日記調で、ストレートでありながら
過去のものとは似ていない新鮮さが
ありました。

27. 明日を行け

イントロのオケに、石森さんの
ギターが重なって、ツアーで育てた
この曲へ。

宮本さんの歌がCDよりも
遥かにいいです。歌詞の間違い率は
ほぼ100%ですが。石森さんも宮本さんに
呼吸を合わせながらハイトーンコーラスを
重ねていく。終盤では、エレカシだけの
世界を感じる4人が向き合っての演奏がありました。
他の誰もが踏み込めない腐れ縁。

28. 新しい季節へキミと

「新しいスタートです!」という
宮本さんの声から、新年のはじまりに
相応しいこの曲へ。強固なバンドサウンドと
華やかなストリングスが混じりあったイントロの
アレンジを聴いて、桜の花舞い上がる武道館の
1曲目だった頃は、こんなに立体的で生々しい
曲ではなかったことを思い出し涙が。走り回って、
客電のついた会場全体を丁寧に見渡す宮本さん。

「いくつも流してきた涙は輝く明日からのメッセージ」


29. FLYER

宮本さんの「オーケー!トミ!」の掛け声から、
約束の歌へ。

「オレは右へ オマエは左へ
素晴らしい思い感じたら落ち合おう」


2日目は宮本さんに横取りされた
石森さんのソロもバッチリ。
新しい季節から石森さんは
吹っ切れたような弾きっぷりでした。

30. ガストロンジャー


「てめえ(自分)の化けの皮と
キミたちの化けの皮を剥がしにいくって
さっき結論した!」

「キリスト教の聖書にも
孔子の論語にも
トルストイのアンナカレーニナにも
ドストエフスキーの罪と罰にも
その他諸々にも書いてあるぜ!」/b>

「いい顔してるぜ!よく見えないけど!
波動で伝わってくる!」


集中力と緊張感が高く、バンドとオーディエンスの
エネルギーの投げ合いも上手くいった
素晴らしいパフォーマンスでした。

『ガストロンジャー』や『珍奇男』は、
毎回必ず違う演奏になるので何度演っても
いい曲です。


31. ファイティングマン

イントロを弾く石森さんの手を
とめて、宮本さんは「楽しかった時間も、
これで終わり,じゃありません,
行け!」



野音の時のように「自信を全て失っても 誰かがお前を待ってる」を
2回歌う。最後は「うるさい」と演奏を静止させてからの、
「エビバデファイティングマン!」、そして、冨永さんの
絞り切るようなドラミングで〆。


アンコール

32. so many people

武道館がライブハウスに変わるような
盛り上がり。「Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah Yeah
Hoo!」の(Hoo!)の裏声も久々に出るくらい絶好調な
宮本さんの喉。

「あらゆるこの世の喜びを あなたと!
あなた!と掴もう」という感じに
歌詞を替えていた気(悲しみを
喜びと間違えて歌ったので、その後の
歌詞をそれに合うように替えていた)が。


33. ハナウタ〜遠い昔からの物語〜

「優しい歌でも、『ハナウタ』でも
演りましょうか。」とストリングスチームを
呼び込んで、予定外のこの曲へ。

いい時も、悪い時も、日常の尊さ、儚さは
変わらないと教えてくれる曲。宮本さんの
表現の多彩さは、ライブやアルバムという
枠の中で豊かなリズムを感じさせてくれます。



ダブルアンコール

34. 花男

演奏の前に、メンバー紹介。冨永さんに対する
パワフルドラマー!バンドの兄貴!という
言葉に涙が。彼には一番厳しいきがするけれど、
応えてくれるだけの存在だという信頼があってこそ。

『花男』〆はやはり爽快。
ベースソロの場面では、「あなたの出番です!
行け!」という風に、向き合って高緑さんをたてるポーズを
みせた宮本さん。

ギターの歪みのような
ドスをきかせたながら伸びていく
宮本さんの歌声は職業
ロック歌手に相応しいものでした。
圧倒的な凄みと迫力と自立した
品格のある唯一無二の歌声。


打ちのめされて、放心状態になるような
ライブでした。ツアー最終日で何にかが
一区切りしたように感じていたので、その次の
段階にエレカシはいるのだと思います。
受け取ったものを大切に抱え続けながら
生きていきます。

最新のエレカシこそが、常に最高の
エレカシだという確信がより強いもの
になりました。今のエレカシが演奏すれば、どの曲も今の
エレカシの曲になっていると終始感じさせられたので、
これはエピック時代の曲だとか、
これはユニバーサル曲だとかいう分け方は
本質的には不必要なのではないかと思いました。
私は『DEAD OR ALIVE』から
『町を見下ろす丘』の頃の、藻掻いているエレカシ
というような姿は、彼らが必死に音楽に
集中することでとっくに乗り越えた過去だと
判断しているので、改めてそういう姿が
みたいとは思いません。今のエレカシは
その頃のような影はないかもしれませんが、
今のエレカシの方が音楽的にも
ロックバンドとしても魅力的に感じます。
常に今を生きるバンドだからこそ、過去の
あらゆるページに、その時にしかない
輝きと説得力が刻まれているのだとも
思います。

宮本さんの声が復活以降、
生まれ変わったように新しくなって、
より変幻自在で予測不可能な歌が
聴けるようになったことを今回感じました。
バンドの結びつきもより強固になっていて、
ソロやコーラスも増えて 、この4人で
やろうという姿勢が具体的になっていて、
これからがより楽しみです。

武道館で聴く、ロックオーケストラ的な
エレカシも、ライブハウスや野音時とは
違う魅力がありました。懐の深いバンドです
エレカシは。

今年こそはアルバムが出る
ことを期待しています。おそらく、3年毎に
オリジナルアルバムを出さないといけない
契約になっているはずですので。
今回みたいな新譜のリリースと
無関係なライブは暫くおあずけかもしれません。
読んでくださって、ありがとうございました。







# by kaze0929 | 2015-01-14 08:10 | エレカシ